「テラヘルツ分光の最先端 −テラヘルツ分光で見えるもの見えないもの−」報告
 

2006年11月2日〜3日 IPC生産性国際交流センター

分光学会テラヘルツ(THz)分光部会は分光学会の専門部会の一つとして昨年の2005 年度より,活動を開始いたしました。これまでにTHz 分光の講習会や応用物理学会でのシンポジウムなどを実施してまいりましたが,このたび2日間にわたるシンポジウム「テラヘルツ分光の最先端 −テラヘルツ分光で見えるもの見えないもの−」を開催しました。開催二日目が休日であるにもかかわらず,民間企業の方を含め,100名以上の方に参加していただき活気あふれるシンポジウムを開催することができました.


はじめに

分光学会テラヘルツ(THz)分光部会は分光学会の専門部会の一つとして昨年の2005 年度より,活動を開始いたしました1)。これまでにTHz 分光の講習会や応用物理学会でのシンポジウムなどを実施してまいりましたが,このたび2 日間にわたるシンポジウム「テラヘルツ分光の最先端 −テラヘルツ分光で見えるもの見えないもの−」を開催することができ,世話人一同大変うれしく思っております。
テラヘルツ電磁波技術(テラヘルツ域の実用光源、計測・分析技術等の開発)は政府の第三期科学技術基本計画(2006 年度からの5 年間)の審議過程で今後推進すべき10 大基幹技術のひとつにあげられた2)ことなどからもわかるように,世間の注目を集め,日本のみならず世界中で活発な研究・開発が進められようとしています。これらの動きはテラヘルツ電磁波技術に対する期待の大きさを示しているといえますが,その一方で具体的な産業応用のめどが立っているとはまだ言いがたい状況にあると思われます。
応用が特に期待されている分野として「安全・安心技術」分野があります。たとえばテラヘルツ電磁波はプラスチックや紙などを比較的良く透過することを利用し,危険物や違法薬物などの探知に応用することが検討されています。このような応用はほとんどの場合,テラヘルツ帯のスペクトルや分光学的な手法・知見を用いています。すなわち基盤となっているのはテラヘルツ電磁波を用いた分光技術といえます。また,生体関連分子のテラヘルツ分光にも期待が寄せられており,従来の振動分光とは異なった情報,例えば分子間の弱い相互作用に関する情報などが得られると期待されています。そしてテラヘルツ帯のスペクトル情報を用いた薬剤成分の結晶多形の非破壊検出や皮膚がんの診断など医薬・医療分野へも応用できるといわれております。しかし比較的単純な有機分子の結晶多形のスペクトルひとつをとってみても,吸収バンドのアサインメント(同定)などが正確に行われている例はほとんどないのではないでしょうか。このように現在は応用(への期待?)が先走り,分光学的な基盤研究が後追いしている状況であるといえます。
理屈の解明は後回しで技術応用が先行するということはよくあることですが,今後テラヘルツ電磁波についての研究・開発が一過性のブームで終わらず,大きく発展できるかどうかは,この分野の研究に分光学的な基礎が確立されるかどうかにかかっているといってもよいのではないでしょうか?また今後,企業や大学などの研究機関において応用・開発的な研究,あるいは基礎的な研究を始めようとされている研究者にとって,テラヘルツ電磁波の分光学的な特徴,その分光・計測利用におけるメリット,デメリットを知っておくことが研究計画を立てる上で非常に重要になってくると思われます。
このような背景や必要性を考慮し今回のシンポジウムには「テラヘルツ分光で見えるもの見えないもの」という副題を付けさせていただきました。テラヘルツ分光で何が分かるのか,何ができるのかを考えようという,ちょっと大それたテーマですが,このテーマに真剣に取り組むことが分光学会(おそらく“分光”と名のつく唯一の学会)で活動するものにとって一種の義務ではないかと考えております。テラヘルツ分光に関連した研究をこれからはじめようとしておられる方,あるいはすでに研究されている方にとっても,本シンポジウムが少しでも有用な指針や情報を与えられるものとなるよう祈念しております。

2006 年11 月2 日 分光学会テラヘルツ分光部会 世話人一同

招待講演
シンポジウムでは「テラヘルツ分光で見えるもの見えないもの」を主題として二日間にわたって様々な分野の研究者の方々をお招きし,招待講演をしていただきました.埼玉大学学長,田隅先生に貴重なご講演を頂けましたことを筆頭に,講師先生方から一歩踏み込んだ新鮮なご講演を頂けましたことを幹事一同心より感謝しております.


ポスターセッションおよび最優秀学生ポスター賞
一日目の最後にはポスター形式による一般発表と企業展示(一般発表23件,企業展示15件)が行われ,活発な議論がされていました.今回のシンポジウムでは学生さんの積極的な学会への参加を促すための試みとして,「最優秀学生ポスター賞」を設けられました.23件の一般発表のうち,約半数の11件が学生さんによる発表だったのですが,その全ての発表について招待講演講演者およびテラヘルツ分光部会幹事による厳正な審査が行われました.審査員の皆様にはご協力を感謝しております.
栄えある第一回の「最優秀学生ポスター賞」は中島佐知子さん(東京理科大)の「肝癌組織のテラヘルツ分光画像へケモメトリクスの適用」が受賞しました.代表幹事より賞品と賞状が授与されています.


会場および懇親会の写真

要旨集について
テラヘルツ分光部会では要旨集のの残部を¥2000で販売しております.ご希望の方は西澤(nzw914@aispec.com)までご連絡下さい.


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